実は今まで「日本沈没」の劇場版を見た事がなかった。
それを見た。ああ、ちなみに73年版オリジナルの方です。リメイクも一応先に見たのですが、あっちは感想など何もないので置いといて。
しかし、これはまた……なんて強烈な。
原作で衝撃的だったシーンのひとつに、日本人の退避計画で「何もしないほうがいい。このまま日本人すべてが日本列島と運命を共にしたほうがいい」という意見が出てくるところだと思う。さらっと流されてたけど。
この場面は形を変えて映画に出てくる、というのは知ってたわけだけど……。
まさか、こんな強烈なシーンになっているとは想像もしてなかった。
「何もせんほうがええ」という言葉を聞いた時の、若き丹波氏演ずる総理の顔がすさまじい。
一瞬、唖然。
そして呆けたような顔になり、そして告げた老人に顔を寄せて聞き返す。
総理「何も……せんほうが、ええ?」
老人「そうじゃ。一億一千万の人間が、このまま日本と共に海に沈んでしまうのが、日本および日本人にとって一番いい事じゃとな」
総理「……………しかしワタリさん」
このあたりの表情の変化がもう、とても言葉には言い表せない。
おそらく総理は、自分も内心同じ気持ちを持っている事に気づいたのだろう。涙を浮かべ、泣きそうになりつつも、自分は総理大臣という立場だからその選択はできない。
しかも「何もせんほうがいい」が、脱出計画を練った識者たちの(本当の)最終意見だというのも強烈に過ぎる。
けど実際「日本が沈没するならどこに逃げますか」というアンケートで、現実に「どこにもいかない。日本と運命を共にする」という意見が第一位になったという話も冗談でなくきいたことがあるだけに…… T_T
しかし、これは、やられた。
東京の大地震の映像の物凄さ(技術自体はもちろん古いセットタイプの特撮だが、逃げ惑う人々の描写が半端じゃない。正直怖すぎる。映像に優れているが無人の市街が壊れるだけのリメイク版が怖くもなんともないのと比べるとあまりにも対照的)もそうだけど、田所博士の鬼気迫るありさまといい、本当に凄い。
もっと早く見るべきだった。
できれば、田所博士役の方がご存命だった昨年までに。