フツウってなんだ。この問題は非常に難しい。
誰だって自分の中に大小あれ秘密を秘めているだろう。何かのトラウマであったり、風変わりな趣味趣向であったりと色々だ。だがそれが自分自身の肉体や身内の問題であればなおさらだ。
本作の主人公は真性半陰陽。InterSexualと言い古くは「ふたなり」とも呼ばれた「男とも女とも判断つきかねる」人。精神面では男性寄りだが女性としての一面も併せ持ち、肉体的には中性だがゆっくりと女性化が進行中。さらに全体的なホルモン不足により深刻な障害も抱えていて、多感な思春期だというのに「自分の性別を決定して治療」しなければならないという非常に厄介な問題も抱えている。
もちろん対人関係も簡単ではない。明治以降のわが国では彼らを示す日常語すら存在せず認知度も限りなくゼロに近い。彼らは明治以降の富国強兵策の中、多くが生殖能力を欠いているために置きさられてしまっているのだ。ほとんどの人は存在すら知らず、そして辛うじて知っても偏見に満ちた目線しか持たない。
彼を受け入れないどころか無知と偏見に溢れた見方しかしない人々。ただ彼の人柄に、態度に触れ、共感したり賛同した一部の人間のみが味方につくという状況。いや、「一部が味方につく」というだけでも奇跡的だと思うが、それでも彼は泣き苦しみつつも前に進もうとする。
本作、あまりに面白いのでとうとう全巻注文してしまいました。
とりあえず「読んだ事ない」というあなた、もしも興味があるなら是非おすすめである。
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うちの一次創作はいわゆるTSものを扱うのだけど、大抵はサイボーグなど人工のボディに精神を移植するSFものの話であって、そもそもISですらない。ただ「人工のボディ」に移るという倫理的に微妙なテーマや、社会的男女の分業とかジェンダー等に踏み込む関係上性の問題は切り離せないのだけど、ISは取扱いが難しいうえ実際の人に取材した事もないために今まで二例しか扱っていない。そしてその二例とも、周囲の無理解や偏見によって、決して幸せとは言い難い過去を持っている。
(あー、ちなみに性同一障害の人は取材した事あります。でもISはよく誤解されるけど性同一障害とは全然関係ないので。ピアノとチェンバロ以上に別のものです)
でも個人的には関心の大きな問題で、いつかISをテーマにした作品をまた書きたいと思っています。