【後漢流離譚ネタバレ】 本作における千早の才能について

このエントリーはタイトル通り、『三国志アイドル伝 ―後漢流離譚―』に関するエントリーです。
盛大なネタバレを含みますので、問題のある方はこの先を見ない事をおすすめいたします。

さて。
本作の中での千早についてですが、たぶんアイマス本編とは違うアプローチが初期から見られています。
(とはいえ、僕はアイマス本編の千早に詳しくないので、あくまで推測です。
どうしても僕はDS目線になっちゃいますから)

千早は、本来のアイマスでは自ら作詞作曲などはしていなかったようですが、涼州の民謡などの音楽エッセンスもとりこんでいきます。また義父となった馬家の長の勧めなどもあり、詩も書きはじめた事が伺えます。
きっかけはもちろん、言うまでもないでしょう。
プロデューサがいないし作詞作曲をしてくれる人もいない。
そして現地の音楽や詩歌は今まで触れたことのないもの。
そんなところに上昇志向のプロの歌姫が何年もいたわけですから、そうなっても全然不思議はない。

しかも、これらは素人的なものではなかったようで、数年をかけて涼州のみならず漢中にまで知れ渡り、また事実上の馬超の妻となってから作った創作物の一部は曹操の手にも渡り、絶賛されている。(七十六話『医の道』の11~12分あたりに描写あり)

また、最終話にある人物評にも、千早の残した創作物は子供たちの手で改めて編纂されて発表され、のちの東アジアの文化史に多大な影響を与えたともある。

実際のところ、紀元200年そこそこの涼州周辺の音楽や詩作物なんて、本来ならば現代まで残る事すら難しかったろう。これはたとえば日本におけるアイヌ文化をみればわかる。

アイヌは狩猟民族であったため書き文字というものを持たず、それゆえに民族が滅ぼされると共に、その文化もほとんど消え去ってしまった。昭和時代に一部の人々が消えてゆくアイヌの文化遺産などを記録に残したのだけど、どれほど多くのものが時の彼方に永遠に去ってしまったかなんて、今となっては推測するのも難しいありさまだろう。

だからこそ。
1800年も昔の涼州で現地の音楽や詩作物を拾い上げ、自分の創作物に組み込んだりするカタチで残した千早の業績はおそらく、本人が思っていたよりもはるかに巨大なものになったと思われる。
この点だけでも、おそらく後の東アジアの歴史そのものに絶大な影響を与えたと思われる。

だけど、凄いのはそこだけではない。
もしも、もしもだけど。
また、もし彼女の持ち込んだ、当時まだ存在しないはずの近代西洋音楽の要素が少しでも現地の音楽に残されていたら?

音楽というのは技術的にいえば、科学のように発展するものではない。近代西洋音楽は決してテクノロジーと違い、世界のトップというわけではない。中東音楽のような微分音も持たないし、一部のアフリカ音楽のように複数のリズムが同時進行する構造も持っていないからだ。

でも、音楽とはいろんな要素の組み合わせでもある。
そして、ひとからひとに伝わる時は、水の波紋と波紋がぶつかるかのように広がるもの。

だからこそ。
当時まだ存在しなかった「組み合わせ」である西洋式の音楽要素という巨大な波紋。
本来なら、アイドルたちが去る事で担い手がいなくなり、その後は衰退する可能性のあったもの。
それが改めて彼女を通して、1800年前の中華に何度も、何度もばらまかれたわけで。

知ってるだろうか?
人間の音楽センスというものは、生まれてから中学生くらいの年代までに完成するものだそうです。
だから。
アイドルたちが去ったあとに千早が歌会などのイベントを定期的に続けた事でおそらく、1800年も昔に現代西洋音楽の音楽センスを取り込んだ世代がたくさん生まれた可能性があるわけで。

実際の子供たちの活動も興味深いけども。
こういう、音楽活動や文化活動で生み出された「子どもたち」がいる事も忘れちゃいけないと思う。

需要があれば、創りだされること。
すなわち。
たぶん弦楽器に新しい流れができたと予想する。

当時もう存在したはずの西アジア系の楽器、つまりトルコのタールとかその系統の楽器群では騎馬民族系の楽器では機能的に足りない。しかし、リュートの系列は多弦すぎて、騎馬民族のような人々には扱いにくい。
(モンゴルなどの古楽器をみればわかるんですが、移動時に持ち運びやすいように工夫されているんですよね)

ゆえにおそらく、ウクレレや十九世紀ギターのようなガット弦で小ぶりな楽器が制作されたのではないかと思います。

でも当然ですが。
音楽史の中に突然、これらの楽器はオーパーツの如く登場するわけですから。

なんとか無事に現代のような音楽が広がる時代になってから、古代中国のミステリーみたいな感じで語られるのかなぁ、とは思います。

「NHK特集・古代中国の伝説の歌姫、彼女はどこからきたのか?」みたいな。
で、おそらく、

グラハム・ハンコックみたいな人のおもしろ本で「実はタイムスリップした現代の歌手の卵かだれかで~」みたいな事を書かれたりして……うむ。

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