タイムパラドックスの話

以下は実話。

誰かがこう言った。
「これほどの被害を誰も警告に来なかったなんて。やっぱりタイムマシンとか夢物語なんだなorz」
ある人が答えた。
「警告にきた人?いるんじゃないか?ただ一部の人しかそれを信じなかっただけさ」

こんなとこに津波は来ないと嘲笑されつつも自腹で避難所作成、70人の命をすくった爺さん。
無駄遣いと言われつつも「児童が安全に逃げられるように」避難所直結の通路を学校から作った校長先生。
「津波てんでんこ」を形にするため、全国の教育機関に配布されている災害時避難の要綱を軒並み無視して独自の訓練を重ね、登校していた生徒全員が無事という結果を残した小学校。

もしタイムマシンで警告にきた人がいたとしたら?
彼はおそらくまず東電に行ったのだけろうけど、どこの馬の骨ともつかない人間の言葉なんて、欲に固まった連中の耳には入らなかったろう。政府は担当者がころころ変わるので話にならなかったのかもしれない。
時の記述は書き換えられない。マクロレベルでは、タイムパラドックスは起こらないのか。

ただ、それはあくまでマクロレベルの話だ。
もしかしたら、この避難所作ったじいさんに「逃げ場を作らなくては」と吹き込んだ人の中に未来人が混じっていたのかもしれない。避難訓練の提案をする時に「津波てんでんこ」を皆が思いだしカリキュラムを作り直すように誘導した人々の中に、あるいは避難経路がまずくないかと責任者に申し上げた誰かがそうだったのかもしれない。マクロレベルでは無理でもせめて草の根と。
あるいはもっと遡り、世界一とまで讃えられる耐震構造の推進など。

悲劇は確かに避けられなかった。
だが「時間旅行なんてできないんだな」と考えてしまうのも早計な話。丘の上で出会った未来の少女が、実は……のあの古くさくてロマンティックな物語のように。

SF者のはしくれとしては、そう申し上げたい。

「タイムパラドックスの話」への3件のフィードバック

    1. 一瞬( ゚д゚)ポカーンとなった後、あわてて記事みて確認しますた。ありがとうございます。

      何かご事情がおありみたいですけど、やりきれないものがあります。
      せめて今はご冥福をお祈りしたいところです。

  1. 関連記事を読んでいると、妻子から仕事仲間まで全て( ゚д゚)らしい。
    何を思い、何を悩み、何故行ってしまったのか誰にも分からず「謎」と呼ばれている。

    素顔のサコミズ隊長を、メビウスのDVDのインタビューで見た時「芯が抜けた」ような印象を持った事がある。

    ああ、この人は「芯の部分」にシナリオで作られた人柄を入れる事で演技する人なんだ、と思った。

    役者はタイプによって、そのまんまの人と、自分の中にあるものを引き出す人と、役柄になりきってしまう人に分かれるようだ。

    例えば仮面ライダー1号こと藤岡弘、。
    あの人は根っからあの人で(笑)、実物と演技の性格が基本的に異ならない(と思しい)。
    以前、北海道の奥尻島が災害にやられた時、藤岡は矢も盾もたまらず物資を持ってヘリで現地に向かっている。
    その理由は?・・彼が以前、TVドラマの撮影で奥尻島に滞在した時、現地で世話になった人々を忘れがたかったためだったと言う。
    「たったそれだけの事で?!」
    しかし、それが藤岡弘、仮面ライダー1号の素顔なのだ。
    今回の震災では、藤岡の人柄と機動力を見込んで友人知人が彼に資材を結集し、3月中には米1トン、水、燃料を持って現地に向かっている。

    仮面ライダーが藤岡弘、なのではない。
    藤岡弘、その人こそが仮面ライダーなのだ。

    しかし、普通の役者に於いて、さすがにそれは真実ではない。
    レオナルド・ニモイの二つの自伝「私はスポックではない(I’m Not Spock)」と、「私はスポック」の間には、20年の歳月が流れている。
    役者はそのはまり役となった役柄に呪われ、忌避し、そして受容すると言う過程を辿る事がある。
    ウルトラマン役者たち(通称ダンディ4、黒部進・森次晃嗣・団時朗・高峰圭二)らにも、それは付いて回ったと言う。

    子供は、彼らのヒーローを忘れない。
    しかし、ヒーローたち自身の素顔は、悩める人である。
    それは、70年代から80年代のヒーローたちには、おそらくは切実な悩みであったろう。

    ヒーローとしての顔の呪縛が解けるには、ヒーローとなる以前にもっと有名だった、ウルトラマンティガこと長野博(V6)と、イルマ隊長こと高樹澪の出現を待たねばならない。

    高樹澪は2003年に難病に掛かり、誰にもそれを告げずに隠棲していたが、ファンも事務所も誰一人彼女を見捨てず、6年後に復帰した時初めて、頭蓋骨を開く難しい手術に耐えて、戻ってきたと言う事が明らかになった。

    役者は、悩める人なのだ。
    しかし、時としてその演技の仮面が、誰にも悩みを告げられぬ、告げぬ障壁となって本人を苦しめる事もある。
    高樹の場合は、その悩める人の顔には「孤高」の印象がある。
    強固な意志と人を寄せ付けぬ誇りが、その人格の「芯」を成しているかに見える。

    サコミズ隊長こと、田中実の場合にはどうだったであろうか。
    サコミズ隊長の最後の言葉は「空を見上げて、ずっと考えていたい」だったと言う。

    空の彼方に、何を見てしまったのか・・・。

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